デザイナーが知っておきたい著作権

今日は、JADGA(グラフィックデザイナー協会)のPDFを元に、著作権のいろはを勉強していきたいと思います。

【い】著作権は表現を保護するもの、アイデアは保護しない

著作権法 第二条
 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

ポイントは、“思想又は感情を創作的に表現したもの = つまり「表現」を保護するという点。

これに対立する概念として、「アイデア」があります。

表現とアイデアの違い?

まず、この違いはなんでしょうか?イラストやデザインで表現するためには、必ずアイデアがあるはずです。いきなり表現はできません。しかし、アイデアというものは、みんなの中にあるもので、表に現す=表現しない限りは、アイデアがあることの証明はできませんよね?

ダウンタウン松ちゃんがワイドnaショーで、的確な言葉で表されていました。

「あなたが思いついたアイデア、実は何万人の人が同じアイデア持ってる。それを表現するっていうのができるかどうか、そこがわかっていないと。」と。

アイデア盗作!?京アニガソリン事件

容疑者は、「俺の小説(アイデア)を盗んだな!」と放火殺人に及びました。しかし、アニメーターはあくまでも、表現をする人です。

ロミオとジュリエットのパクリ?

シェークスピアの「ロミオとジュリエット」とブロードウェイミュージカルの「ウエストサイド物語」は、物語の表現が大変似ていて、ニンマー教授の調査によれば、13もの共通点があるそう。

もう、シェークスピアの著作権は無くなっていますが、もし仮にまだ著作権が保護されていた場合は、「ウエストサイド物語」は著作権の侵害にあたります。


アイデアが共通であるだけでは著作権侵害にはならないが、

表現が共通すれば侵害にあたる

著作権の大原則

日本の著作権法では、『アイデアは保護しない』と明記されているわけではないですが、こういう意味になるようです。

ちなみにアメリカの連邦著作権法では、『アイデアは保護しない』と明記されています。

【ろ】偶然同じ表現になった場合は著作権侵害になるか?

答えは、なりません。

AさんがBさんの著作を見ることなく、たまたま同じものが出来上がった場合は著作権侵害にあたりません。

これを法律用語で、「依拠」、英語で「アクセス」というそうです。


偶然の一致で同じものができた場合は、

著作権侵害にはならない

著作権の大原則

これが、特許・意匠・商標などの知的財産権(=産業財産権)との大きな違いです。

著作権では、見ていなければセーフ!よって同じようような著作が複数生じることになります。相対的な権利と言われるようです。

しかし、特許・意匠・商標権では、「見たことない。」「知らなかった。」は、関係なく許されません。

なるほど、そのために誰でも見られるように公開をしているのですね。

著作「見てません」と嘘ついたら?

こんな輩も現れるでしょう。しかし、著作権をめぐる裁判では、「見ていません」と主張しても、あまりにもぴったり一致している場合は、社会通説上ありえないこととして、主張が通らないことがあるそうです。

例えば、昔のコマーシャルソング小林亜星さんの「どこまでも行こう」という曲と、服部克久さんの「記念樹」という曲が類似していると著作権をめぐった裁判では、服部さんの「聞いたことがない。」という主張は通りませんでした。

なぜなら当時、「どこまでも行こう」はCMでお茶の間を賑わせていた国民的な楽曲で、その世代では誰もが一度は耳にしたことがあるであろう曲だったからです。

【は】誰でもどんなものにも著作権はある!

これを専門用語で「無方式主義」といいます。

実はあまり意味がない©️マーク

これは、実はアメリカの著作権法が1980年代まで採用していたマークです。

©️をつけないと著作権として保護しませんよ!という、万国著作権条約の規定にのっとったものでした。
これを「方式主義」といいます。

日本では、このような条約ではなく、元々「ベルヌ条約」という、マークが無くても誰にでもどんなものにも著作権は発生するという、無方式主義の条約に加盟していました。ですから、そもそもマークは必要なかったのです。

アメリカも、1989年にベルヌ条約に加盟して、©️は不要となりました。ですから昔の名残で、効力はなくても使う人がたくさんいるんですね。

内容専門的用語加盟国
万国著作権条約©️をつけないと著作権保護しませんよ。法式主義
ベルヌ条約マークが無くても誰にでもどんなものにも著作権は発生しますよ。無方式主義日本・アメリカ

©️は注意・警告

現在©️は、「これは著作権ですよ。使うには権利者の承諾が必要ですよ!」と注意・警告する目的で使われているようです。

おまけ 著作権と著作者人格権は別物!

デザイナー契約を結ぶ際、契約書に「乙は著作者人格権を行使しないものとする。」という一文を記す場合があります。

この「著作者人格権」は「著作権」とは全く違う権利なので注意が必要です。

著作者人格権とは、クリエイターの名誉や作品への

思い入れを守る感情的な権利。

著作権とは、財産的な権利。

これについては、こちらのサイトでかなりわかりやすく説明してくださっていて、大変勉強になりましたので、リンクを貼らせていただきます。

咲くやこの花法律事務所 「著作者人格権とは?」

まとめ

  • 著作権は、表現を保護する権利である。アイデアの保護はされない。
  • 偶然の一致で作ったものが同じになった場合、著作権侵害には当たらず、双方に著作権が認められる。
  • 著作権は、誰にでも、どんなものにでも生じる権利である。

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